004●散弾銃の照準(頬付けの意味)
掲載第4回目は、あなたの銃は何処を狙っているのか?
照準のお話です。
▲ 照準線と弾道 ▲
御存じのように競技で使用する散弾銃には照星があるだけで、ライフル銃や拳銃のような照門がありません。ライフルなどは下図のように、照門と照星を通して標的を狙います。

この図では、照門と照星の高さが同じで、照準線が銃身と平行の場合を示しています。この場合、弾丸は銃口を出たところから重力の影響を受け、飛行時間あたり一定の率で落下して行くため、図の赤点線で示す通り、距離が離れるほど照準線から離れて行きます。いずれにしろこの照準線では、絶対に標的に命中することはあり得ません。
そこで実際には、距離と弾速から計算した弾丸の落下距離を考慮した高さに照門の位置を高くすることで、銃口の向きが上に角度を持ち(掲角)、下図のように照準線と弾道が標的の位置で一致するようにします。

ところが散弾銃では前述の通り照門がありませんから、下図のようになります。

この図では、銃身がリブに対して並行になっていますが、単身の銃や水平2連銃ではこのようになります、しかし上下2連銃ではほとんどの銃が下側の銃身にわずかに上向きの角度がつけられています。
この図でも解るとおりライフルの場合と同じく、照準線が銃身の向きと水平では、絶対に目標となるクレーに当る事はありません、たしかに散弾は図の赤色の領域に拡散しながら飛んでいきますが、散弾の弾道はライフルに比べて、弾速も遅く落下も早いので、クレーまでの距離が離れれば、照準線からどんどん離れて行く事になります。

そこで実際には、銃床のベントによるコムの高さ(TechTips第3回参照)で決まる頬付け位置により決定される角度で銃身の揚角を取る事で、上図のように照準線と弾道をクレーの位置で交差させるようにして、命中させようというものです。
一般のトラップ用の射撃銃では、銃をかまえたときに照星と中間照星が8の字のように見える状態で、照星がクレーの下に接触して見えるように照準すると、36ヤード付近で、照準線と弾道の中心線が交差して、クレーに命中するように設計されています。しかし実際にはこの状態より、目の位置が上にきてしまうように銃床は作られている場合(ベントが浅い)が多く、実際には照星と中間照星がある程度離れて見える状態でしか照準することが出来ないことが多いのです。これはなるべく発射時の反動を直線的に肩で受け止める事で銃口の跳ね上がりを抑え、失中時の2の矢の照準を楽にするための銃床設計がなされているためです。
しかしこれは実にいいかげんな照準システムで、実際初心者のころから散々言われてきた「
頬付け肩付けが重要だ」の意味はすべてこの「照準線に対する銃口の揚角を一定にするため」に必要な事だったのです。

▲ 頬付けと肩付け ▲
このような照準システムでは射手の体格や頬骨の形状などにより、照準点がまったくバラバラになってしまいます。そこで実際には、銃に身体をあわせるわけにもいかないので、銃による照準線と撃破点の違いを意識して照準をあわせることになります。具体的には射手それぞれが自分の銃に合わせて、照星の示す照準点を、標的であるクレーより下方向に置く(つまり下を狙う)ことで、照準しています。
下図はベントが浅い銃か頬付け位置が目から低い位置の射手の場合を示しています。

この場合は照準線と弾道の交差点がクレーより手前に来るため、実際の撃破点は照準線に比べて上にずれ(つまり上を撃っている)ますから、図のように照星と中間照星が開きぎみになり、クレーに対して照星の位置は下ぎみになった状態で、正しい照準となります。
さらに下図はベントの深い銃、頬付けの位置が目から近い位置の射手の場合を示しています。

この場合は照準線と弾道の交差点がクレーに近付きますから、ほぼ照星で狙った点が撃破点となります。このときの照星と中間照星の関係は図のように接近ぎみとなり、照星とクレーも近い位置にみえます。
以上のことから、正確な照準をするために必要な事は以下の通りです。

● 銃によるベントの違いを理解して、自分の銃の照準線と撃破点のずれを把握する。
● つねに同じ状態に照星と中間照星が見えるように、頬付け位置と肩付け位置を毎回同じになるようにする。
● 銃をスイングしたときに銃と視線の関係(角度)に変化が無いように、銃を保持する。

照準のみで言えばこのような点に留意することが重要です。お持ちの銃の銃床がアジャスタブル・コム(アジャスタブルベント、アジャスタブルキャスト)の場合、はベントを変えることで狙点の上下位置を、キャストを変えることで、リブ後端が顔の中心にたいする距離を変えることができるので、顔の大きさや頬骨の高さによる頬付けの影響を少なくすることができます。上級射手が銃床を改造するのも同様な効果をえるためです、初心者の場合は、銃床をいじる前に安定した挙銃動作ができるようにする方が先決だと思います。

注意)管理者「くろ」はへたくそですが、ほっぺたのお肉が有るので、照準が楽なように、今回銃をアジャスタブルコム/キャストに改造に出しました。これで左でも右でも撃てる銃になっちゃいます。