003 ● 銃床のお話
掲載第3回目は、銃床のお話です。
▲ 銃床の各寸法の見方 ▲
各メーカーのカタログを見ると、銃床についての色々な数値が記載されていることがあります。これらの数値は、なにを表しているのか?。またその意味は?などの疑問に対する説明をしようと思います。
○ 各数値の意味 ○
カタログ記載の数値には以下のようなものがあります。
・プルまたはプール(LENGTH OF PULL)
・コムまたはコーム(DROP AT COMB)
・ヒールまたはヒル(DROP AT HEEL)
・キャストオフ・ヒール(CAST OFF HEEL)
・キャストオフ・トウ(CAST OFF TOE)
これらの数値は下図の各部分の寸法を表しています。
それでは各数値について説明しましょう。
○ プルについて○
プルは上図の(1)の部分の長さです、英文では Length of pull ということで、直訳なら「引きの
長さ」となります。
これは銃床後端の肩付け部分から引き金の指掛け部分までの長さをいいます。この寸法は射手の体格や、腕の長さにより最適値が決まってくるようになります。また一般的にはトラップ銃の方がスキート銃にくらべて長めになっています。この数値はメーカーにより異なっていて、また同一メーカーでも、出荷対象国向けごとに違ったサイズを設定していることも多いです。一般にアメリカ向けはヨーロッパ向けにくらべて少し長めになっています。射手の体格が小柄な場合にあまり長めでは、グリップ位置が前に出てしまい、安定して構えることが出来にくくなってしまいます。ただし多くの人が短かめの方が安定して構えられると思っているようですが、短すぎると逆に不安定になってしまいます。
○ コムとヒールについて ○
上図(2)と(3)の部分がコムとヒールのドロップ寸です。
これは照準線からの銃床の下がり具合を表す数値です。一般に後部のヒールの方が、前部のコムより下がり寸が大きくなっています。これによりいわゆる「ベント」が決定されます。この寸法が大きいことを「ベントが深い」といいます。ベントは一般に狩猟銃が一番深く、スキート銃がついで深く、トラップ銃が一番浅くなっています。ただしこの数値はリブの高さと密接な関係がありますので比較する場合注意が必要です。銃のリブが低い場合や無い場合は、ベントを深くとると照準する視線が低い位置に置くことが出来るようになり、照準線が実際の標的に近い点に狙えるようになるので、狙いやすい銃になりますが、銃身の延長線に対して角度が大きくなるために発射時の銃の跳ね上がりが大きくなります。そこでリブを付けて、照準線の位置を高くすることで、銃身の延長線上に銃床後部の肩付け部分をもって来る事が出来、反動を上手く直線的に肩に伝えることで、銃身の跳ね上がりを抑えながら、照準する視線の位置を適正にとる事ができるようになっています。ですから同じ形の銃床でも、リブの高さによって実際のベントは変わってきます。
○ キャストオフについて ○
左図の(4)と(5)がキャストオフです、これは銃の中心線から、銃床の後端部をわずかに外側に角度を付ける事で、照準する目の位置が銃の中心に行きやすいようにしたものです。図の様にバットプレート(リコイルパッド)の下部が上部より大きく外側にでています。射撃銃では大きめの数値ですが、狩猟銃では全くない場合もあります。右射手向けの銃ではキャストオフですが、左射手向けの銃では逆になるために、キャストオンとなります。
競技専用銃の一部では、頬づけを調整するために、チークピース(銃床上部の頬につく部分)の高さを可変にできるようにした物もあります。これは、「アジャスタブル・コム」と呼びます。伝統的に散弾銃では銃床そのものをお金をかけてカスタマイズして自分に合せるようにしていたので、「アジャスタブル・コム」のような方法はあまり採られていませんでしたが、ライフル射撃専用銃などでは、床尾部分のプレートの高さや角度、頬つけ部分の高さなどは可変出来るのが普通です、日本ではあまり見かけませんが、外国ではよく見かける形式です。
参考に幾つかの銃の数値を下表に掲載しておきます。

銃床スペックの比較(mm) *各社カタログの数値
銃名
Length of Pull (LOP)
Drop at Comb(DAC)
Drop at Heel(DAH)
Cast off Heel
Cast Off Toe
NewSKB MJ-5
(トラップ専用・国内向)
356
35
40
0〜3
3〜6
NewSKB MJ-5
(スキート専用・国内向)
349
49
56
0〜3
3〜6
NewSKB 785
(トラップ専用・米国向)
362
35
35
-
-
Berreta DT-10Trident Trap
(トラップ専用・欧州向)
373
32
42
-
-
Perazzi
(欧州向銃床,No35)
368
35
45
4
8
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