002 ● 散弾装弾のお話
掲載第2回目は、散弾装弾のお話です。
▲散弾装弾の構造▲
散弾装弾は下図のような構造をしています。外側部分であるケースは樹脂製の円筒状部分に鉄に真鍮メッキを施した包底部分が接着されたものです。
このケースのリム部分の中心には、外側から雷管が圧入されています。
内部はリムに近い方からまず発射用の火薬があり、その上に押さえるように樹脂製のワッドが入っています。さらにそのワッドのカップ部分には散弾が入っています。
△撃発のメカニズム△
撃針により雷管が叩かれると、雷管が発火し、その火がケース底部の小穴を通ってケース内に入り、発射薬を着火させます。火薬が爆発的に燃焼を開始すると、発生したガスはワッドを押し出し始め、それにつれてカップ内の散弾も押し出されて行き、ケース上部のクランプされていた部分を押し広げながら、銃身内を進みます。ワッドは銃身内では散弾より遅れながら進み、チョーク部分で変型しながら銃口から散弾の後に射出されます。散弾の集団は銃口付近の絞り(チョーク)部分で絞られて、銃口から発射されます。その後散弾は紡錘状の集団となって飛翔して行き、大気中に放出されたワッドは空気抵抗により急速に速度を落とし落下します。
△ケースについて△
現在のケース部分はこのような形ですが、30年ぐらいまでの昔は紙製の筒でした、またハンドロード用には真鍮製のケースも使われていました。
ケースの種類は口径とケース長で分類されます。口径はトラップ、スキート共に12番がほとんどですが、20番も使われています、アメリカでは16番も使われています。それ以外の口径は狩猟用となります。
ケース長は下図のようにケース先端が開いた状態で全長を測定したものを言い、未発火の装弾の先端がクリンプ(畳まれた)された状態の全長ではありません。
現在の射撃銃は70ミリの薬室長で作られているので、必ず70mmの装弾を使います。下表には現在入手出来る12番の装弾のケース長を掲載しておきます。ケース長は必ず薬室長に合ったものを使って下さい、あやまって薬室長より長い装弾を発射すると、ケース先端が開ききらず、射出抵抗が増大するため内圧が異常高圧となり、銃身破裂などの重大な障害を引き起こすことがあります。なお現在ではケースはほとんど国産されていません、国産装弾でも、海外のメーカーより、雷管付きで輸入して使用しています。ケースではイタリアB&P社のゴードン・システムなどが有名です。

ケース長(インチ)
ケース長(ミリ)
対応薬室長(ミリ)
備考
2と1/2
65
65
旧式銃
2と3/4
70
70
標準
75
75
マグナム
△ワッドについて△
昔のワッドはフェルト製で、単に発射薬を押さえておくだけのものでしたが、現在のワッドは下図のような樹脂製のガスシール・クッションタイプの物になっています。
発射時のガス圧を無駄に漏らさず、効率的に散弾に伝える構造です。またクッション部分が設けられたことで、撃発時のショックをやわらげて(基本的に射手に対してではなく、弾に対して)銃身内でワッドが散弾を包んだままある程度前進させることが出来るようになり、射出時のパターンが改善されるようになりました。
△散弾について△
散弾の量は基本的に重さで表し、一粒の大きさは号数で表します。ただし現在の射撃競技では散弾の重量が24グラム、散弾の直径が7と1/2号の装弾が公式装弾として指定されているので、これを使う事になります。装弾量が増えると、発射薬も増えますから威力が増しますが反動も大きくなります。狩猟用では28〜36グラムまでが多く使われていて、ケース長の異なる強装弾であるマグナム装弾ではケース長が長い分42〜50グラムの散弾を使う事が出来ます。
散弾の材質は鉛ですが、射撃用の散弾ではチョーク部分での衝突時の変型を防いで飛行時のパターンを改善する目的で硬度を上げるために、鉛にアンチモンなどを混ぜた鉛合金が使われている場合も多いです。
狩猟用では獲物にあたった時の食い込みを良くするために磨いた物や、環境に配慮した鉄製、タングステン合金製などがあります。
△発射薬について△
発射に使われる火薬にはシングルベースかダブルベースの無煙火薬が使われます。散弾銃の火薬はライフル銃に比べ、射出抵抗が小さいため、燃焼速度の早いものが使われています。火薬は粒の形状と大きさ及び、コーティング剤の種類などにより燃焼速度をコントロールされています。コーティング剤は黒鉛とポリマーで構成されていて、前述の通り燃焼速度の調整、防湿、酸化防止などの目的でなされています。発射後の銃啌内の汚れのほとんどはこのコーティング剤です。
△射撃用の装弾の選択基準△
前述の通り現在は24グラム、7.5号散弾、70mmケース長の装弾を使います。だいぶ昔は32グラム、以前は28グラムを使っていたので、いまでも射撃場では28グラムを使っている人を多く見かけます。しかし公式ルールにのっとって同じ条件で競技してこそのスポーツですから、公式装弾を使いましょう、銃の持ちも格段に良くなります。
△メーカーや価格による違い△
現在国内で製造されている物は旭エスケービーで製造されているアポロとナイキ、日包工業製のOEM装弾以外はすべて輸入品です。国産もケース及び雷管は輸入しています。輸入装弾では、レミントン、ウインチェスター、フィオッキ、ガンバ、リオ、などのメジャーメーカーの物が出回っています。公式装弾に限っていえば、基本的な性能にはほとんど違いは無いでしょう、初速などもチョークの効きを変えないようにほとんどのメーカーが1350付近に設定しています。パターンや反動については確かに個性がありますので、御自分の感覚に合ったものを使われるとよいでしょう。
価格による相違はやはり有る様です、ヨーロッパのメーカーではOEM(相手先ブランドでの委託製造)が多いので、各地域向けの製品を多数製造しています、その中にはコスト重視の低価格品もあります。このような製品ではどうしても品質にばらつきがあるようで、問題点は雷管の取り付け精度と発火性能、ワッドの射出抵抗に有る様です。海外での資料では、その結果不発や雷管突き抜けなどが起きることがあるようです。現在国内で輸入流通している装弾に関してはほとんどこのような問題は見られなくなりました。
我々の地元では高い銃を使っている人にかぎって安弾の自慢をする人が多いのも事実です。買い物上手の自慢をする人は、狩猟でも猟果自慢の為に無理をする人が多いような気がします。射撃主体の人は高い弾、安い弾でみえをはるより、本番と練習の差を無くすためにも、普通の弾を普通に買うのが一番でしょう。ただし良い弾を安く買うのは財政的に良い事ですが、買いに行く交通費も計算にいれておく必要があります。
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